お子様の顎が小さいと歯並びに影響が出るのではないか……と、悩まれる親御様もいらっしゃることでしょう。顎が小さいと、歯並びが悪くなるといった見た目はもちろん、虫歯や将来的な抜歯の可能性といったリスクも高まる可能性があります。このコラムでは、お子様の顎が小さい原因とそれにより生じるリスク、矯正治療の方法などについてご説明します。
目次
子どもの顎が小さい理由とは
お子様の顎が小さい理由は、遺伝などによる先天的なもの、食生活による後天的なものの2つに分けられます。
遺伝によるもの
骨格は遺伝性が高く、お子様の顎の大きさも遺伝する可能性が高いといわれています。とくに遺伝の影響が大きく見られるのは、顎の骨の特徴的な形や大きさ。親御様の上顎や下顎が小さいと、お子様の顎の大きさも小さくなる傾向が見られます。
食生活によるもの
食事は顎の発育に影響するため、食生活の内容によっては顎が発達しにくくなり、小さくなる場合があります。舌でつぶせるような柔らかいものや飲み込みやすいものばかり食べ、偏食気味であまり噛まずに食べられるものを好む場合、噛む回数が少なくなり顎の発達が鈍くなってしまうのです。
顎に筋肉をつけるには、しっかりと食べ物を噛むことが大切。顎の成長は噛む回数だけでなく、奥歯の動かし方に影響を受けるといわれています。硬いものを食べるときは奥歯ですりつぶすように動かすことで横に動く力が加わり、顎の成長が促されるのです。
顎の大きさはいつ決まる?
お子様の顎が小さいと、成長とともに顎も大きく成長するだろうかと、不安に思う親御様もいらっしゃるでしょう。顔の成長は、5歳までに40〜45%、10歳ごろまでに80%。そして20歳ごろには成長が止まると言われています。
上顎と下顎では成長時期が異なり、成長の早い上顎は、一般的に小学校低~中学年の時期にかけて大きく成長。一方、下顎の成長ピークは、小学校高学年から思春期終わりごろになります。
顎が小さいことによる影響
お子様の顎が小さいと、見た目だけでなく、健康面にも影響を及ぼす場合があります。
歯並びが悪くなる
顎の骨が歯列の長さより小さい場合、永久歯の生えるスペースが足りません。すると、叢生(そうせい)や八重歯といった、悪い歯並びになってしまう可能性があります。
顎が小さいことで起こる歯並び 1.叢生
お子様の顎が小さいと、歯並びが前後したり重なったりして生える、叢生になるかもしれません。乱ぐい歯と呼ばれることもある叢生は、歯がガタガタに生えてしまっているため歯磨きが行き届かず、虫歯や歯周病になりやすいリスクを伴います。
顎が小さいことで起こる歯並び 2.上顎前突(出っ歯)
上顎前突(じょうがくぜんとつ)は、前歯が前方に出ている状態です。上の前歯が突出している原因のひとつに下顎の成長不足があります。また上顎前突は、口が開いていることが多く、口腔内が乾燥しドライマウスとなりやすいため、虫歯や歯周病を引き起こしてしまいがちです。
顎が小さいことで起こる歯並び 3.反対咬合(受け口)
反対咬合(はんたいこうごう)は、受け口とも呼ばれる、下の顎が前に出ている状態です。小さい上顎と大きい下顎の組み合わせのため、反対咬合になる場合があります。
関連コラム:「歯並び悪い」はどんな状態?原因とその影響、治療方法は?
口呼吸になる
上顎が小さいと、鼻腔が狭くなり鼻呼吸にも支障が出るため、口呼吸をしがちです。下顎が未発達の場合は、舌の動きに悪い影響を及ぼすため活舌が悪くなり上手に食べ物を噛めず、口呼吸になってしまうお子さんもいます。
抜歯が必要になる可能性がある
顎が小さくて永久歯の並ぶスペースがないと、矯正治療で将来抜歯の可能性が出てきます。抜歯せずに矯正しようとしても歯を並べるスペースがないため、抜歯するしかない場合もあるのです。
小さい顎の改善方法
お子様の顎が小さい場合、食事面に気をつければ改善できることもあります。まずは普段の食生活を見直してみましょう。
硬いものをよく噛む
顎の発達には、食べ物を噛む動作が大きく関わっています。顎の成長は食べ物を噛み、奥歯で食べ物をつぶす行為により促されるためです。硬いものをすりつぶすように奥歯を横に動かすことが顎の成長につながるため、お子様の食事は、噛む回数だけでなく食べ物の硬さにも意識しましょう。
かといって、食事は楽しく食べたいものです。最初から硬いものばかりだと、お子様が食事を楽しめなくなってしまいます。段階的に、硬い食べ物を増やしていくといいでしょう。
食事の姿勢に気を付ける
お子様の顎の成長につながる噛む力をつけるためには、正しい姿勢で食事をとることも大切です。強い力でものを噛むためには、足が地面や床にしっかりついた状態で、背筋を伸ばして食事をしましょう。
口の筋肉を動かしやすい姿勢で食事をとれば、あごの成長発達にもつながります。足裏が床についている時とついていない時では、噛む力に15%の差があるといわれているのです。
食事の正しい姿勢は、以下のとおり。
1. 背もたれから少し背中が離れる程度に深く腰掛けます。背もたれには寄りかからず、胸を張りましょう。
2. テーブルと体のあいだに、にぎりこぶし1つ分のスペースを空けます。テーブルの高さは、胸とおへその中間あたりが理想です。
3. 足の裏全体を、しっかり床につけます。
4. 食べるときは、顎が上がらないように注意して食事します。
顎を大きくする矯正治療
小さい顎を大きくする矯正は、永久歯に生え変わる6〜11歳に行います。歯列混合期に床矯正による矯正を行うと、将来の抜歯のリスクが軽減できるためです。
拡大床
拡大床(かくだいしょう)は、プラスチックのプレートやワイヤーでできた拡大装置です。真ん中にあるネジをまわせば装置が徐々に横に広がります。取り外し可能な装置ですが、効果を得るには1日に12時間から16時間の装着が必要です。
急速拡大装置
急速拡大装置は、上顎の骨を土台ごと広げる器具です。成長途中の上顎骨は、二枚の骨が合わさってできており、完全には接着していません。上顎骨が離れる力を利用し、装置で顎を広げた状態を一定期間確保すると新しい骨ができてきます。
お子様の小さい顎が気になったらご相談を
お子様の顎が小さい場合、硬い食べ物を日常の食事に取り入れたり、正しい姿勢で食事をとったりすることで改善される場合もあります。顎が小さい状態をそのままにしておくと、矯正治療が必要になるだけでなく、将来の抜歯や口呼吸による健康への影響など、さまざまなリスクが上昇しかねません。お子様の顎が小さい場合、矯正治療で顎の大きさを広げられる場合もあります。
お子様の顎が小さいのではないか……とお悩みの親御様は、信頼のおける矯正専門医にご相談ください。
この記事の監修医師
葛西モア矯正歯科 院長
酒井 優真
Yuma Sakai
- 日本矯正歯科学会 認定医
- インビザライン公式認定ドクター
日本全国の歯科医院で矯正治療に従事し、3,000人以上の治療を担当。2017年、葛西駅前に「葛西モア矯正歯科」を開院。
歯列矯正への心理的ハードルを下げるべく、「治療中の見た目」や「痛みの少なさ」に配慮した治療に力を入れている。
<3000症例以上の豊富な経験と高度な技術で、装置の見た目にもこだわる矯正治療を提供>
住所:〒134-0083 東京都江戸川区中葛西3-37-16 第二カネ長ビル5F
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